#589 口は災いのもと

 5月も最終週となり、最高気温が30度近くになる日も出ています。九州南部に続いて沖縄・奄美地方はようやく入梅となり、九州北部もまもなく入梅となります。梅雨明けまでしばらくは湿度の高い蒸し暑い天気が続きます。今週は入梅前の最後の晴天となるようです。
 さて、私たちは日常生活で相手のことをあまり考えずに軽々に言葉を発することがあります。それが冗談や洒落であればよいのですが、冗談では済まない場合も多々あります。いわゆる「売り言葉に買い言葉」で夫婦喧嘩や親子喧嘩、兄弟喧嘩や友達との口論など、様々な場面で起こります。しかし個人的な口喧嘩はまだ修正可能です。お互い勘違いしたり、間違った個所を謝り、仲直りできるからです。しかし公人となると冗談では済まない場合が多々あり、発言した本人が辞任したり、失脚したりすることが多く起こっています。今回もそれに漏れず、大きな失態を引き起こしました。
 元農林大臣の辞任(実際は更迭)です。ある会合で聴衆の受けをねらって「コメは買ったことがない」と発言した問題で舌禍事件となり、大臣を辞任しました。公人の発言は重いものです。たとえそれが冗談でも受け取る側がどのように反応するかを絶えず推測する必要があります。国を動かす大臣たる者は自分の発言に対して責任を取る必要があります。残念ながら最近の国会議員はその資質が極端に劣っている感じがします。国会での質問においても本質的な問題を論じず、枝葉末節な事柄にこだわり議論しようとしません。たとえば最重要な問題である国防や外交などの論点で、空論ばかり繰り返し、まっとうな議論になっていません。これでは有事や災害時に国として対応できないでしょう。
 今回の米不足騒動にしても、政府の減反政策等で数年前からすでに予測されていた問題です。実際、米が不足して慌てて備蓄米を放出しても間に合いません。まして販売価格を競売にかけるとは最悪です。最も高く値をつけた業者(今回は全農です)が買い取り、高値のままで市場に出すので、当然米価は高くなります。子供でも分かる理屈です。どこの企業もそうですが愚者がトップについている企業や団体は「先見の明」に乏しく、その場しのぎの対策しか取れません。その結果倒産を招きます。
 次の新しい大臣も口先だけの人気取りで、一世を風靡しています。彼が導入したマイバッグは一見するとエコにつながりますが、その結果全国的に万引きが増え、犯罪が増加しました。物事には必ず表と裏があります。両者を天秤にかけながら判断しなければなりません。彼は米の随意契約を行うと言っていますが、報道によりますと、あくまでも備蓄米に関しての契約らしいです。また随意契約は政府との単独の契約になるので、贈収賄が発生するという負の面があります。さらに今年度の新米に関しての契約はまだ白紙だと言われています。この口先大臣がどこまでやれるか見守る必要があります。
 さらに、酷いのは首相の発言です。先日の国会で「日本の財政はひどい。ギリシャ以下である。」趣旨の発言をしました。この発言に対して怒る議員があまりいませんでしたが、これは即辞任に値する発言だと思います。西欧社会でギリシャといえは国家運営が破綻している国だと認識されています。財政が悪化し、国家運営ができていない国がギリシャなのです。ところが多くの国会議員連中はこのような常識を知らないのか、知識がないのか分かりませんが、首相が国家破綻宣言をしているにもかかわらず、何も反論しない、愚かな集団と化しています。何のための、誰のための政府・国会議員でしょうか。本当に先が思いやられます。
 今回のコメ騒動で痛感したのは、東日本大震災でもそうでしたが、一度有事や大災害が起こると、国の対応は非常に遅いということが明白です。特に南海トラフ大地震が発生しますと、その被災規模は東日本大震災どころではなく、日本の太平洋側の大半が被害を受け、多くの物流が止まってしまいます。言いかえれば日常生活で入手できる食料や生活品が数週間手に入らないということです。したがって現時点で少なくとも2週間分の食料や飲料水を確保していなければ、災害時に対応できないということになります。言いかえれば「災害時には誰も助けに来ない。少なくとも「自助」しなければならない期間が数日続く」と考えるべきでしょう。
 また台湾危機に際して、日本の離島に住んでいる住民を救出し、九州を中心とした避難地域に移送する計画を国が立てていますが、NHKは今年の3月に次のような報道をしました。その一部を抜粋します
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『政府 “台湾有事”など念頭 沖縄離島からの避難計画 初公表』
 いわゆる「台湾有事」などを念頭に、政府は、沖縄の離島からの避難計画を初めてまとめ公表しました。住民らおよそ12万人を6日程度で避難させ、九州や山口県の合わせて32の市や町で受け入れるなどとしています。政府がまとめた沖縄の先島諸島の5市町村からの避難計画では、自衛隊や海上保安庁の船舶や民間のフェリー、それに航空機を使って、1日2万人の輸送力を確保します。そして、すべての住民に観光客を加えた合わせておよそ12万人を、6日程度かけて福岡空港や鹿児島空港などに避難させるとしています。
 避難した人たちは、そこから貸し切りバスなどで九州の7県と山口県の合わせて32の市や町の受け入れ先に向かい、ホテルや旅館に滞在してもらう計画です。この際、地域のコミュニティーを維持できるように地区の全員を同じ自治体で受け入れます。具体的には、

▽与那国町の住民は、佐賀県の佐賀市や鳥栖市で
▽竹富町の波照間島の住民は、長崎県大村市で

受け入れるなどとしています。
 政府は、高齢者や入院患者への支援策や、避難が長期化した場合の対応などについて、さらに検討し、2026年度に基本要領を作成する方針です。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250327/k10014762161000.html
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 上記の報道では住民の移動に6日程度かかるそうです。避難計画の詳細は分かりませんが、従来の戦争と異なり、近代戦ではミサイルやドローンなどの遠隔操作で有事勃発から数日で決着がつきます。住民の移送に6日かかるようでは、すでに台湾有事が終わっています。日本の自衛隊と米軍がどの程度台湾有事に関与するかは明確ではありませんが、緊急移送の際の舶での移動は潜水艦の餌食となり、飛行機による移送は敵部隊による飛行場爆撃などで滑走路が使用できなくなります。つまり、有事が起こると判断された場合は少なくとも数日前から避難行動を行わないと住民の多大な犠牲が生じます。このように有事ひとつにしても素早い決断をしなければなりません。備蓄米放出にしてもかなりの時間がかかっていますが、有事が起こったときに今の政府では冷静な判断ができないでしょう。災害の際や有事の際に誰も助けてくれません。自分の命は自分で守るしかありません。まさに「自助」の精神が必要となります。

2025年05月25日