#197 もう一つの時代の終わり
今日は敬老の日ですが、今朝のテレビ各局のワイドショーで昨日紹介しました安室奈美恵さんのラストライブの特集と樹木希林さんの訃報を報じていました。樹木希林さんは昭和から平成を代表する女優さんで、テレビの「時間ですよ」や、「寺内貫太郎一家」に出演して、特に「寺内」ではおばあちゃん役が大評判で、西城秀樹さんと息の合った配役はお茶の間を毎回沸かせていました。また偉大な女優さんが逝ってしまいました。ご冥福をお祈り申し上げます。
さて安室奈美恵さんは今年デビュー25周年で引退したわけですが、もう一人今年デビュー50周年を迎えた歌手がいます。マスコミはほとんど取り上げませんでしたが、この人物もおそらく日本の歌曲史上に名を遺すことでしょう。その名は岡林信康です。知る人ぞ知る「フォークの神様」と言われている人です。1968年に「山谷ブルース」でデビューした彼は自作自演の弾き語りスタイルで脚光を浴び、その後はっぴいえんどとロックに挑み、都会から離れた山村での生活を通して生まれた演歌風作品は美空ひばりとの交流につながりました。以降も歌謡ポップス、テクノポップスと演奏スタイル変えていき、現在は日本伝統の民謡のリズムを取り入れたエンヤトットを中心に活動しています。彼の作った歌は決して万人向けの楽曲ではありませんが、彼の主張する生き方や考え方には共感する熱狂的なファンがたくさんいます。多くのミュージシャンが彼を尊敬しています。
私は中学1年生で彼の歌に出会いましたが、その衝撃は今でも忘れません。それ以来45年ほど彼の「追っかけ」をしています。彼との出会いがなければ音楽を趣味にしていないでしょう。彼は今年72歳になり、本人は明言していませんが、年齢的に現在行われている全国ツアーが最後の活動になるかもしれません。先週の木曜日と金曜日にコンサートが福岡で行われ、私は金曜日のコンサートに出かけました。コンサート会場は普段と違い、70歳前後の老人?が多く集まって、老人会のような雰囲気でした(笑)。彼の容貌はさすがに72歳の年齢は隠せず、歌の大半椅子に座って歌っていましたが、その歌声は若い時と大差なく、伸びのある声が印象的でした。2時間を超すコンサートでしたが、最後まで気力溢れる姿を目にすることができました。もしこれで彼が引退すれば、「フォークソングの一つの時代」が終わります。
彼の歌の魅力は実生活から生まれた歌詞と旋律豊かな曲のみごとな調和です。そして彼の歌の一番の魅力は歌詞の奥深さです。
♪自由への長い旅
いつの間にか私が私でないような
枯れ葉が風に舞うように小舟が漂うように
私がもう一度私になるために
育ててくれた世界に別れを告げて旅立つ
信じたいために疑い続ける
自由への長い旅を一人
自由への長い旅を今日も
この道がどこを通るのか知らない
知っているのは辿り着く所がある事だけ
そこが何処になるのかそこで何があるのか
分からないまま一人で別れを告げて旅立つ
信じたいために疑い続ける
自由への長い旅を一人
自由への長い旅を今日も
この歌は彼自身が永遠の新曲だと言っていますが、人生を旅に例え、旅人として日々生きていくことを示唆しています。また彼の楽曲で一番好きな歌詞が「山辺に向かいて」です。達観した人生観を表わしています。
♪山辺に向かいて
緑に濡れている山 赤く燃えてる山
白い眠りにつく山 いろんな色に
姿を変えて生命は巡る 街から遠く
そんな風に見えた
山の雪は川に落ち 川は海に注ぐ
水はいつか空の雲 流れるように
姿を変えて生命は巡る 街から遠く
そんな風に見えた
無理やり冬を生きてた そんな気持ちがした
何かをひとつの色に 閉じこめていた
巡る生命の音が聞こえる そいつに乗れば
素敵なことだろう
いろんな顔を見せてよ まだ見ぬ俺の
たやすく決めつけないさ 自分のことを
巡る生命の音が聞こえる そいつに乗れば
素敵なことだろう
緑に濡れている山 赤く燃えてる山
白い眠りにつく山 いろんな色に
姿を変えて生命は巡る 街から遠く
そんな風に見えた
Youtube等で上記の歌を一度お聴きください。岡林信康の生きざまが歌の端々ににじみ出ています。彼の魅力の一端に触れることができるでしょう。今年72歳になった岡林信康ですが、50年歌い続けることは並大抵のことではありません。様々な音楽ジャンルを通して自分の音楽スタイルを絶えず追求してきた岡林信康。いつまでも現役で歌い続けて欲しいと思っています。