#506 さらば、昴よ!
秋らしい天気が続いています。遠くの山々は紅葉が始まり、街路樹の銀杏は黄色く色づいています。また子守歌代わりに聞いていた夜の虫の声もいつのまにか消えてしまいました。季節は晩秋へと進んでいきます。例年よりも秋が短く感じられます。
さて本日のブログタイトルは谷村新司さんの有名な楽曲「昴」の最後の歌詞です。連日のようにバラエティ番組で報じられていますが、先日谷村新司氏が逝去されました。心よりお悔やみ申し上げます。この訃報はNHKを始め、民法のニュース番組のトップニュースとして扱われ、中国や韓国など海外のニュースでも取り上げられました。また様々な追悼番組も放送されました。特に昨日のフジテレビの「ミュージックフェア」では過去に放送された谷村さんの楽曲を編集し直し、彼の特集番組として放送しました。
谷村新司と言えば、多くの歌手に名曲をプレゼントしたことで知られています。彼の世代(70代のミュージシャン)はフォークソングの第1世代であり、この世代はマスコミを嫌い、テレビには出演しなかったことで知られています。特に吉田拓郎や井上陽水は自分たちでフォーライフレコードを設立し、自由に楽曲を制作・販売していました。1960年代後半から1970年代にかけて登場したフォークシンガー達は、従来のプロの作詞家・作曲家と一線を画し、自分の主義主張を貫いていました。そして出演時間を制限されるテレビ番組には出ませんでした。
そのような中で谷村氏はフォークソングと歌謡曲の橋渡しをした貴重な存在でした。彼の醸し出す楽曲はフォークソングのジャンルに留まらず、世間に広く受け入れられ、ミュージシャンとして、作詞作曲家として確固とした地位を築き上げました。フォークシンガ第1世代の中で彼の他に「さだまさし」や「中島みゆき」など次世代の多くのミュージシャンに多大な影響を与えたアーティストが多くいます。
インターネットやSNSを持たなかった当時の若者(現在の60代から70代)はどのようにして情報を共有していたのでしょうか。それは深夜放送を通して様々な情報を得ていました。深夜放送のパーソナリティ、つまりDJをしていたのが第1世代のフォークシンガー達です。谷村新司を始め、吉田たくろうや中島みゆきなどミュージシャンだけでなくラジオ番組のパーソナリティとして人気を博していました。また「オールナイトニッポン」や「パックインミュージック」など当時人気のあった深夜ラジオ番組が彼らの楽曲を紹介し、そこから多くのヒット曲が登場しました。かぐや姫の「神田川」が良い例です。
このように深夜放送を通して当時の若者は連帯し、投書やリクエストカードを通して若者の悩みや苦しみを共有していました。現代の若者と異なり、1つのラジオ番組を通して全国の若者が共感し、夢を語り合った古き良き時代であったと思います。そのような時代の先頭に立って若者のアイドルだった1人が谷村新司です。後年になり様々な分野で活躍した彼ですが、これからももっと活躍してもらいたかったと思います。
時代を通して輝き続けた彼は今天に戻っていきました。彼はこれからも日本のミュージシャンの活躍を見守ってくれることでしょう。「さらば、昴よ!」