#512 「はじめてのおつかい」は児童虐待?
今年も残り3週間となりました。気分的にも何か慌ただしく感じられ、年末の大掃除や年賀状作成など、するべきことが山積し、焦りが生じます。年末に慌てて一度にすることは避けたいものです。
さて、年末年始のテレビで特集される番組の一つに「はじめてのおつかい」があります。幼い子どもが一人でお使いに行く姿を微笑ましく見守る番組ですが、この番組に出てくる子どもに対して児童虐待の疑いがかけられているようです。Forbes
Japan ではその特集記事を載せています。
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『「はじめてのおつかい」が海外で大反響、想定外の論争も』
日本テレビ系列で放送されている「はじめてのおつかい」。3歳から6歳程度の子どもが「おつかい」に奮闘する姿をリアルに描く、人気バラエティ番組だ。
そんな「はじめてのおつかい」が2022年より、ネットフリックスで190カ国に向けて配信され、海外で大きな反響を呼んでいる。その中には少なからず、戸惑いの声も含まれているようだ。
<「公共交通機関に幼児を置き去りにする日本のテレビ番組」>
英紙ガーディアン紙は「オールド・イナフ(「はじめてのおつかい」の英語版タイトル):公共交通機関に幼児を置き去りにする日本のテレビ番組」という見出しで番組を紹介している。決して間違っているわけではないが、なかなか刺激的な表現だ。
また米タイム誌も、”Why Old Enough Is the Show You Should Be Watching Right Now(なぜ「オールド・イナフ」は今すぐ見る必要のある番組なのか)”というタイトルのもとに、「2020年3月に番組がネットフリックスで公開されるや、驚きと喜び、そして信じられない思いと不安が米国内を駆け巡った」と書いている。
そして、東京大学大学院工学系研究科の加藤浩徳教授の「日本の道路や通りは、子どもでも安全に通行できるように設計されている。日本には元来、自立と自給自足を大切にする文化がある」という言葉も引用する。
また、ある日本人専門家に取材したニューヨークタイムズ紙も、「日本においては、子どもをお遣いに出すことは子育ての典型的な方法であり、日本文化のアプローチの象徴ともいえる」と彼の言葉を引用している。
また米タイム誌は「(「はじめてのおつかい」を巡って)アメリカでは畏敬や歓喜から不信や懸念まで、多くの言説が飛び交った。それは必然的に、子育てのスタイルや文化の違い、インフラや政策に関する議論にまで繋がった」としている。
日本ではゴールデンタイムに放送されている「癒やし系」の番組に対し、海外メディアはとてもシリアスな感覚で受け止めているようである。
<児童虐待? 違法行為?>
言うまでもなく、「はじめてのおつかい」はプロによって製作されたバラエティ番組であり、「おつかい」の経路や手順には十分なフォローが施されている。子どもたちは決して放置されているわけではない。陰に隠れた大人に、安全に「おつかい」を遂行できるよう見守られているのだ。ネットフリックスで配信されている映像の中でも、通行人に紛れるスタッフたちの奮闘ぶりを繰り返し確認することができる。
そういった安全面への万端の備えがあるにもかかわらず、海外の人々にとって「はじめてのおつかい」は非常にショッキングな番組なのだ。そこには、日本と欧米における、子どもの取り扱いに対する決定的な差異が潜んでいる。
例えば、アメリカでは子どもを一人きりにさせること自体が児童虐待であり、違法行為であると見做される。州によっては13歳の子どもに一人で外出や留守番をさせることさえも罰則の対象となるのだ。
<日本では「小学3年生以下の子どもだけでの外出NG」の法案が大バッシング>
これは日本人にとって受け入れがたい感覚だろう。日本では、子どもの「おつかい」や留守番が日常の一部に当然のように組み込まれており、実際、筆者も小学校低学年の頃には既にそうしていた記憶がある。13歳で一人きりになれないというのは、率直に言って窮屈とさえ思えてしまう。
一方、日本ではそもそも、常に子どもへ目を配るのに十分な環境が整備されていない、という家庭も少なくないはずだ。先日、埼玉県の自民党県議団が「小学3年生以下の子どものみでの外出や留守番」を禁じる埼玉県虐待禁止条例改正案を提起して激しい批判を受け、撤回に追い込まれた事例は記憶に新しい。批判内容の多くは「生活が成り立たなくなる」という切実なものだった。
価値観や法律、そして目の前の現実、それら全てに合致しているからこそ「はじめてのおつかい」は日本で長く愛されてきた。しかし一度海を越えると、それは大きなカルチャーショックを生むのである。
<「日本の治安」に大賞賛も>
ただし、子どもの扱いについて、欧米と日本の間に優劣をつけてしまうのも早計だろう。前出の米タイムス誌は「『オールド・イナフ』のような番組がアメリカで製作される可能性は極めて低い」としたうえで、「(日本でこの番組が成立しているのは)犯罪率の低さと銃規制の強さのおかげだ」と賞賛を寄せている。
つまり「アメリカでは子どもを一人きりにしなくてよい環境が整っている」と言える一方、「日本では子どもを一人きりにしてよい治安の良さがある」とも言えるのだ。
どちらも改善していくことこそが理想であるとは言え、国ごとにどのような違いがあり、何が優先されるかは歴史や文化に深く根差しているのである。国が異なれば、児童虐待のボーダーラインすらも大きく変わるのだ。グローバル社会と叫ばれて久しい現代においても、確実に。
<「かわいい子には旅をさせよ」?>
ただし、価値観は不変のものではない。「はじめてのおつかい」の放送が始まって30年以上が経過しているが、その時間の中で子どもに対する危機意識は高まっているように思われる。以前と違い、今では多くの小学生が防犯ベルやGPSつきのスマートフォンを持っており、親は、直接的ではないにせよ、子どもを「一人きり」にさせない努力を重ねるようになった。そのような流れは人々に、「3歳の子どもにおつかいを頼む」という文言から受ける印象を変化させ始めているかもしれない。
もし今、まったく新しく「かわいい子には旅をさせよ」を地で行く番組が作られれば、少なくないクレームが寄せられることは容易に想像できる。転じてそれは「はじめてのおつかい」の、長寿番組としての実績あってこその美点であると言えるだろう。
国ごとに価値観こそ違えども、根底にある想いは共通している。それは「子どもたちを危険な目に遭わせたくない」という想いだ。子どもたちが安心して暮らし、時には「おつかい」のような小さな大冒険に出て自信や達成感を得て帰ってくることができる、そんな環境を目指していきたい。
(https://forbesjapan.com/articles/detail/67279)
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日本では「はじめてのおつかいは」心温まる番組として受け入れられていますが、文化が異なれば「児童虐待」として受け取られかねない番組です。物騒なアメリカでは子どもを車の中に置いておくだけでも親は警察に逮捕されます。「かわいい子には旅をさせよ」は文化によって異なる意味合いを持っています。「はじめてのおつかい」はその典型的な番組です。あなたはこの番組をどう思いますか。