#574 郷に入っては郷に従え
1週間ほど続いた大寒波もようやく終わりが近づいているようです。これまでに全国各地で今までにないほどの降雪量を記録しています。専門家によりますと、これも温暖化の影響だと言われています。日本海の水温が例年よりも高く水蒸気量が多いので、その分積雪量が増えているそうです。この大寒波も終わりを告げ、ようやく冬も終わりを告げることになるでしょうか。
さて、インバウンドの急激な上昇により、日本各地でオーバーツーリズムの影響が出ています。このオーバーつリズムは換言すれば日本文化と観光客の文化との摩擦とも言えそうです。「郷に入っては郷に従え」を1つの教訓として観光客が日本国内で過ごしてくれれば良いのですが、実際はそうではありません。特に中国人のマナーはヒンシュクを買っているようです。本日はそれに関する興味深い記事を紹介します。
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『「中国人観光客のマナーが悪い!」問題』
この間、夫と北海道を旅行しました。北海道は中国人観光客の間で急速に人気が高まっています。「日本に行くならどこへ行きたい?」と中国人の同級生に尋ねると、みんな「北海道」と口を揃えるほどです。
なぜ、東京でも京都でもなく、北海道なのかーー。それは、映画『Love Letter』のロケ地だからだそうです。
『Love Letter』(ラヴレター)は中山美穂さんと豊川悦司(62)が主演を務めた日本映画です。1995年に公開された時には多くの同級生が生まれていなかったはずですが、どうやらこの映画は中国で多くの人に愛されているようです。実際、北海道に行ってみると周りの観光客はほとんど中国人でした。
日本の文化が大好きで、日本旅行を楽しみにしているかわいい友人が私の周りにたくさんいる一方、「中国人観光客はマナーが悪すぎる」という動画が日本のSNSで度々話題になっており、その温度差を感じています。今回の北海道旅行では、「マナー」について改めて考えてみました。
<日本人の感覚では「ありえない」と思うけど……>
そもそも、「マナーが悪い」とはどういうことだろうか。中国には道に痰を吐く人、なぜかトイレに鍵をかけないおばさん、歩きタバコをするおじさんがいます。大学の前の大通りで、ノーリードのヨークシャーテリアが飼い主のバイクを追いかけて激走しているところも見ました。すごい散歩の仕方です。
日本人の感覚では「ありえない」と思うことが日常的に行われています。彼らが日本に来たときに同じことをすると日本人は驚き、怒りさえ覚えるのでしょう。
「日本に来たら日本のルールを守るべき」という意見に私も賛成です。私自身、海外に旅行する時は、なるべくその国の言葉でコミュニケーションをするようにするし、その国に住む人々の文化を尊重し、違いを楽しむことを大切にしています。
だから、旅行先で相手の文化を尊重しなかったり、蔑んだりする傲慢な人は苦手だし、世界で自分の国の価値観がスタンダードだと思っている人とも合いません。
一方で、自分が海外旅行に行った際に、完璧にその国のマナーを守れているかと問われると、自信がありません。どこかで、誰かに不快な思いをさせている可能性もあるでしょう。それは日本にいる外国人観光客も同じです。
日本には「トイレットペーパーは流して捨てる」「エスカレーターは右を空ける」「公共交通機関内では静かに」など、中国にない細かいルールが多く存在します。日本でマナーが悪いといわれている観光客も、決して悪意を持ってやっているわけではないでしょう。だから、悪意のないマナー違反に対しては寛大でありたいと思っています。
もちろん、日本に好意を持っておらず、あえて迷惑行為をする中国人がいるのも事実です。嫌いな国にわざわざお金を払って訪れてまで嫌がらせをするとは、ある意味すごい行動力だと思います。しかし、そのような人は中国に限らず、世界中どこにでも一定数いるものです。まともな中国人までそのような人たちと一括りにされるのは、少し気の毒に感じます。
実際に中国で生活してみて驚いたのは、私を含め多くの日本人が想像する以上に、中国人はマナーやモラル向上に対する意識が高いことです。私は比較的都会に住んでいますが、都市部出身の中国人の一部は、農村部出身者に対して「田舎出身だからマナーを知らない」「ああいう田舎者が海外で観光するとイメージを悪くする」と考えているようです。
どこに生まれるか、どんな家庭に育つかは自分で選べません。そして、場所が変われば、価値観や判断基準も変わります。そのことをよく理解し、多数派であっても決して傲慢にならないように心がけています。
<海賊のように無我夢中に……>
マナーに厳しい日本には、「同調圧力」というものがあります。社会人として、良識ある大人として、マナーは守るべきです。しかし、それは外国人観光客に対してだけでなく、日本社会にいる全員が従うべき暗黙の圧力でもあります。たくさんのルールのおかげで快適に暮らせる一方で、窮屈さを感じることもあります。
中国で生活してみて、異なる価値観に触れることがこんなにも楽しいのか! と感じる瞬間がありました。
中国人の友人たちと食事をしていた際、カニやエビが運ばれてきました。私は「どうやって食べるのが正解だろう?」「手でつかんだらマナーが悪いと思われるかな?」と、日本にいるときと同じように悩みました。ところが、同席していた友人は、カニを素手でつかみ、殻を剥かずにそのまま口に入れ、最後に口の中の殻をお皿の上に「ペッ!」と吐き出したのです。
有名女優もドラマの中で同じようにカニを食べていました。つまり、マナーとして間違っていないのです。初めは驚きましたが、日本で感じていた「マナー違反になるかもしれない」という緊張感が一気になくなり、「美味しく食べれば何でもいいよね!」という解放感と背徳感を味わいました。汁で口の周りや手をベタベタにしながら、海賊のように無我夢中でカニを食べる——とても楽しくて、「ああ、私は外国にいるんだ!」とワクワクしました。
私が「中国に留学する」と言い出したとき、心配して言ってくれた部分も大いにありますが、中国に対してかなり断定的に、否定的な意見を言う方がいました。SNSで流れてくるさまざまな動画やテレビで流れた反日デモの映像などの影響が大きいのではないかと思います。
私も中国を訪れる前はそうでしたから、その気持ちはわかります。だからこそ、中国に対して少し興味があるけど、自分たちで行くのは不安、という知人には「案内するから、一度中国に来てみてよ!」と言っています。好きになる必要はありません。ただ、自分の五感で感じることは、どんな結果であれ、人生の経験や思い出として価値があると、私は思います。
先日、本当に友人たちが中国に来てくれることが決まりました。私の初めての通訳ガイドデビューも兼ねて、とても楽しみにしています。
https://friday.kodansha.co.jp/article/412256
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「旅の恥は搔き捨て」と言いますが上記にある中国人だけでなく、60年代から70年代の日本人にも当てはまる事柄です。当時の日本は海外旅行のブームで、JALパックなどの団体旅行で多くの日本人がハワイや欧州、東南アジアに集団で出かけていき、レストランでは大声で話し、現地でヒンシュクを買っていました。「お上りさん」的な心情で海外の観光地に出かけて、現地の人たちに迷惑をかけた時代があります。現在では個人旅行が中心となり、海外旅行が定着した日本ですが、今でも観光地で迷惑をかけていないでしょうか。気になるところです。
海外旅行は文化交流であると同時に文化摩擦の場であるとも言えます。現地では一人の日本人=日本人全体として見られます。私たち一人ひとりが観光客としてだけでなく、小さな文化交流大使として振舞えば、日本のイメージはさらによくなることでしょう。