#270 いのちスケッチ

 11月も下旬となり、街中に晩秋の装いを漂わせています。空気が澄んでいるせいか、夕焼けがきれいな日々が続いています。
 さて11月15日より大牟田市を舞台にした映画「いのちスケッチ」が全国で上映されています。(福岡県内では11月8日に先行上映されています。)昨日は授業変更により夜の時間が空きましたので、早速映画館まで足を運んで鑑賞しました。
 映画を見るのは好きですが、なかなか映画館まで足を運んでみる機会はあまりありません。理由の1つにアクション映画などの娯楽映画は毎月たくさん上映されますが、名作と言われるような作品があまりないと思えるからです。また映画館で鑑賞するには少なくとも往復時間を含め3時間以上の自由時間がないと不可能です。私の場合平日夜の時間は塾の授業がありますのでまず不可能です。日曜日などの休日には買い物や所用で福岡まで行きますので、かなり時間を調整しない限り、休日に映画を見に行くことはまずありません。
 さて、現在上映中の「いのちスケッチ」は地元びいきやお世辞抜きに見る価値があると思います。脚本が素晴らしく、若者の挫折や、親子関係、高齢者の認知症など現代社会の問題点を素直に描いています。また動物を通して「命」の大切さを見事に描いています。
 さらに現在、大牟田市動物園が取り組んでいる高齢の動物への取り組みを作品中にみごとに描いています。一例として大牟田市動物園では園内の動物に対して麻酔なしの血液検査を行っており、これは世界的にも珍しい検査方法だそうです。その検査方法が成功するまでをライオンをモデルにして描いています。
 この映画では大牟田市動物園を「延命動物園」の名称で紹介していますが、この名前は架空のものではなく、実際大牟田市民は延命動物園と呼んでいます。と言いますのは、この動物園がある地区を延命寺町と呼んでおり、中学校の統廃合で無くなりましたが、数年前まで動物園の隣に延命中学校がありました。その跡地は現在動物園の駐車場になっています。動物園には当塾から徒歩で5分ほどで行けますので、私は時々散歩ついでに坂道を登って動物園の前を通りますが、この坂道も映画に登場します。
 大牟田が映画の舞台になっていますので、映画の中で登場人物の背景に浮かび上がる様々な景色や通りの場所を確認しながら楽しみました。大牟田駅のホーム、大蛇山の夏祭り風景、有明海の夕暮れの干潟、そしてラストシーンに登場する白川病院近くの堂面川の桜並木など、大牟田市民にとって日常生活に溶け込んでいる風景が何気なく登場します。
 かつての炭都のイメージはなく、大牟田の現在の田舎町の風景が作品中に出てきます。また以前大牟田市動物園を閉園することが話し合われた時期がありましたが、その状況もさりげなく描かれています。
 「いのちスケッチ」は田舎町での出来事をただ描いているのではなく、大牟田を通して同じような状況にある全国の地方都市を描いていると思います。一見する価値ある映画です。

2019年11月17日