#275 赤ちゃんポストの功罪
時間の経つのは速いもので、今年も残り半月ほどになりました。今年も様々な事件や出来事が発生しましたが、あまりにも多くて先月起こったことさえも想起するのに苦労します。
さて、「こうのとりのゆりかご」(赤ちゃんポスト)のことをお聴きになったことがあるでしょう。熊本市にある慈恵病院が事情により育てられない乳児を受け入れる制度です。この制度に対して様々な意見があり、特に生まれた子供に肉親を知らせるかどうかで、かなりの議論があったことを思い出します。この慈恵病院の取り組みについて時事ドットコムに次のような記事がありましたので紹介します。
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『内密出産、進まぬ法整備 子の「知る権利」担保に課題
―赤ちゃんポストの病院・熊本』
乳幼児を匿名で預かる「こうのとりのゆりかご」(赤ちゃんポスト)を運営する慈恵病院(熊本市)が、妊婦が匿名のまま病院で出産できる「内密出産」の受け入れを始めてから1週間。導入の背景には、経済的な困窮などで育てられない母親が、1人で産み落とす孤立出産が相次ぐ現状がある。病院は独自に子どもの出自を知る権利を担保する方針だが、専門家は「民間任せでは不安が残る」として、法整備の必要性を訴える。
「出産後、自分でへその緒をハサミで切る事例もあった」。2017年9月、ゆりかごの運用を検証する熊本市の専門部会は報告書で、孤立出産の危険性を指摘した。出自を知る権利にも言及し、国に内密出産制度の検討を促した。
内密出産は、ドイツでは14年に法制化された。母親は出産時に身元を記した書類に封をして行政機関に預け、匿名で出産。子は養子として育てられ、16歳になると書類を見る権利を得る。実母が閲覧を拒否した場合、家庭裁判所が判断する。
慈恵病院は17年12月、ドイツをモデルとした制度の導入検討を公表し、市と協議を重ねてきた。市は「自治体や民間病院で解決できる課題ではない」として国に法整備検討を要望。厚生労働省は18、19年度事業でドイツなど諸外国の事例を調査・研究中だ。今回、病院は職員1人が親の身元を保管し、子は一定の年齢に達すると出自を知ることができる仕組みで導入に踏み切った。
これに対し、奈良大の床谷文雄教授(民法)は「母親のプライバシーと子の知る権利という利害対立への対応が保障されていない。本来は行政が担うべきだ」と指摘。市は「出自を知る権利をどう担保するかは社会的な合意が必要だ」とする。
戸籍など法的手続きも不透明だ。親の身元が分からない「棄児」の戸籍は、首長が名付け親になり単独で編製される。法務局は「無戸籍になることは想定されない」との見解を示し、内密出産の場合も踏襲されるとみられるが、市は対応を明らかにしていない。
蓮田健副院長は「母子の安全が最優先。事例を重ねないと法整備は進まない」と話す。厚労省母子保健課は「諸外国や国内の現状把握に努めている」とし、自治体に対応を委ねる方針。大西一史市長は「現行法における課題の有無を確認する」とコメントしている。
(https://www.jiji.com/jc/article?k=2019121400330&g=soc&utm_source=
top&utm_medium=topics&utm_campaign=edit)
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慈恵病院の蓮田病院長の講演を聞いたことがあります。蓮田氏は子どもの命の大切さを思い、多くの批判を承知の上で「赤ちゃんポスト」を始めた経緯を述べていました。確かに生まれてくる命を親の一存で消すことはできません。この国では毎年数10万人の命が「中絶」の名目で殺されています。隠れて行われている中絶を含めると、実数はこの数倍に上るかもしれません。
慈恵病院の取り組みを考える上で、もう一度「命」とは何かを考えることが大切です。生まれてくる子は生まれたい意志を持ってこの世に誕生します。出産する女性は伴侶と共に子供の幸せを常に考えるものです。愛=性欲ではありません。
10日後には世界で最も祝福された嬰児の生誕祭が行われます。その事を意識せずにクリスマスを祝い、楽しむ人たちが世界中に溢れます。私たちはもう一度「命の大切さ」を考えるときに来ているのではないでしょうか。