#604 本末転倒
今日は8月最終日で、明日から9月が始まります。暦の上では秋を迎えますが、厳しい残暑がしばらく続きます。本日名古屋は最高気温40度に達する予報が出ていますし、全国各地では35度を超える場所が多くみられます。この先ひと月ほど真夏のような気温の高い日が続きますので、体調管理に充分気をつけて過ごしたいものです。特にエアコンで室内温度の調節をしませんと室内でも熱中症にかかります。確かに電気代がかかりますが、お金よりも健康が一番大切です。
さて、その電気ですが、最近では地球温暖化対策や環境にやさしいエネルギーとして、太陽光発電・風力発電・水力発電・地熱発電・バイオマス発電など再生可能エネルギーが注目されています。しかし政府が支援している風力発電が先日実質上取りやめとなりました。この件について日経新聞の記事によると
「三菱商事と中部電力が、千葉県沖と秋田県沖の3海域で進めていた洋上風力発電計画からの撤退を発表しました。政府が日本で初めて大型洋上風力の開発案件の公募を実施して運営事業者を募り、三菱商事連合が2021年12月24日に落札していました。競合よりも破格な安さで受注につなげましたが、インフレに伴う建設費の高騰で採算が合わなくなり撤退を決めました。」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC294K80Z20C25A8000000/
また国内いたる所で実施されている太陽光発電ですが、これも様々な問題を抱えています。特に今問題となっているのが釧路湿原で開発中の太陽光発電です。産経新聞では次のような社説を出して自然破壊への懸念を訴えています。
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『<主張>湿原と太陽光発電 自然破壊では本末転倒だ』
北海道・釧路湿原の周辺で大規模太陽光発電所(メガソーラー)の建設が相次いでいる。タンチョウなどの生息環境が脅かされるとの地元の懸念は切実で深刻だ。
環境への優しさを標榜(ひょうぼう)するはずの再生可能エネルギーが自然破壊をもたらす開発は、本末転倒以外の何ものでもない。政府は自治体と連携し、急ぎ歯止めをかけるべきだ。
国内最大の面積を持つ釧路湿原は国立公園で、中心部は湿地保全のラムサール条約に登録されている。特別天然記念物タンチョウの繁殖地で、オジロワシ、オオワシなどの猛禽(もうきん)類も暮らす。湿原のヨシやスゲ原とハンノキ林を縫う川には国内最大級の淡水魚・イトウが潜む。
その近辺で樹木の伐採や土地造成が進めば繊細な生態系への打撃は避けられない。釧路市が把握しているメガソーラーは計画中を含めて27件にも上る。湿原の周辺は市街化調整区域で開発は抑制されてきたが、ソーラーパネルの野外設置は建築基準法の対象外なので事業者に規制の抜け穴を突かれた形だ。
事態を重視した釧路市は6月に「ノーモア メガソーラー宣言」を行い、9月定例議会に建設を許可制にする条例案を提出する方針だ。生息地を奪われた大型獣が人里に出没する危険もあり、市民の安全確保の観点からも必要な措置である。
メガソーラーは国内で拡大を続けてきた。平成24年に当時の民主党政権によって導入された電気の固定価格買い取り制度(FIT)が、事業者に巨利をもたらす仕組みだったからだ。各地で営利優先の開発が進み、景観悪化や地滑りなど災害リスクの顕在化が起きている。
既に国内の適地の多くは開発済みで、残された広大な平坦(へいたん)地の釧路湿原周辺がターゲットにされているという構図だ。エネルギーの脱炭素化は国際的な要請だが、ソーラーパネルは本州でも次々、山や池を覆って自然環境を奪っている。政府は事態を放置するつもりなのか。
北海道に限らず全国規模で25年後のカーボンニュートラルと電力供給力の拡大を目指すなら原発の再稼働が避けて通れない。原子力規制委員会の審査に完全合格しながら再稼働に進めていない原発が3基もある。北海道電力泊原子力発電所3号機の再稼働も急ぎたい。
https://www.sankei.com/article/20250826-J7GUYTQXXFM75IZC7TL4B653X4/
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また登山家の野口健さんもこの釧路湿原問題で、独自の視点から警鐘を鳴らしています。
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『野口健氏、“太陽光パネル再利用義務化断念”に危機感「取り返しがつかない事になる」』
登山家の野口健氏が29日、自身のX(旧Twitter)を更新し、政府が使用済み太陽光パネルのリサイクル義務化を断念する方針を固めたという報道に対し、強い懸念を示した。
野口氏は、産経ニュースが報じた「政府が使用済み太陽光パネルの再利用義務化を断念 費用負担決まらず、大量廃棄の懸念も」と題した記事を引用。
そのうえで、「太陽光パネル関連の業界団体からの圧力があったのか分かりませんが…20年もしないウチに大量の蓄電できないバッテリーやパネル等がそのまま野ざらしに放置されている光景が安易に想像できる」と懸念を示し、「故に多くの人々がメガソーラー発電に対し不信感を抱いている」とつづった。
さらに、「政治家の皆さんは将来の日本の姿に責任を抱いていないのかもしれませんが、しかし、これは取り返しがつかない事になる。これは極めて深刻な問題。でありながら決断できない政治は果たしてこの国に必要なのだろうか」と、政府の姿勢を批判。
最後に、「再エネを推進したいのならばせめて、先々に起きるであろう事態を想定し先手をうって頂きたいが無理な相談なのだろうか」と嘆くように締めくくった。
(msn ググットニュース8/2より転載)
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野口健さんのXでは以下の原文が投稿されています。
(Xより引用)
太陽光パネル関連の業界団体からの圧力があったのか分かりませんが…
20年もしないウチに大量の蓄電できないバッテリーやパネル等がそのまま野ざらしに放置されている光景が安易に想像できる。
故に多くの人々がメガソーラー発電に対し不信感を抱いている。
政治家の皆さんは将来の日本の姿に責任を抱いていないのかもしれませんが、しかし、これは取り返しがつかない事になる。
これは極めて深刻な問題。でありながら決断できない政治は果たしてこの国に必要なのだろうか。
再エネを推進したいのならばせめて、先々に起きるであろう事態を想定し先手をうって頂きたいが無理な相談なのだろうか。
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上記の記事にありますように、人間社会のために自然破壊をおこない発電するのは本末転倒です。特に太陽光発電では、発電終了後の莫大な廃棄物をどのように処理するのか結論が出ていません。また廃棄処理をするのに膨大な費用が掛かります。この費用を誰が負担するのでしょうか。環境にやさしいエネルギーを生産するのであれば第一に環境保全を考慮しなければなりません。
天候や自然環境に影響を受けず、安定的にエネルギーを生産できるのは原子力発電所ですが、ご存じのように東日本大震災のような大災害では原子力発電所が大きな損傷を受け、周囲は数10年単位の長期間放射能漏れにさらされます。
現状では日本に向いている発電として従来からある水力発電ですが、発電量に限度があります。火力発電は地球温暖化に影響を与えます。火山の熱を利用する地熱発電は多くの火山が国定公園内にあるので、現在の法律では地熱発電を利用できません。現在研究中の潮汐発電は確かに日本近海の潮汐を利用して発電機を動かす仕組みですが、まだ解決されない問題が山積しています。
日本だけでなく世界中の国がエネルギー問題について様々な対策を行っていますが、究極的な環境にやさしいエネルギー生産はまだ見つけていません。今後の科学技術の発達に期待したと思います。