#507 非情な世界

 スポーツの秋らしく、秋になり駅伝やサッカーなど様々なスポーツがテレビで放送されています。特に昨日から始まったプロ野球の日本シリーズは久しぶりの関西チームである阪神とオリックスの戦いとなり、関西地区の経済効果がうなぎ上りになるそうです。
 プロ野球のリーグ優勝チームや日本シリーズ優勝チームの選手には球団からご褒美の海外旅行や来年度の年俸増額など嬉しいニュースが続きます。一方で優勝球団以外の多くの球団では厳しい現実に向き合う選手もいます。戦力外通告、つまりクビです。体力や年齢を理由に「現役引退」であれば、引退する選手は所属球団や多くのファンから温かい慰労の言葉をかけてもらい、将来はコーチや監督、あるいは野球評論家としての道があります。しかし戦力外通告をもらった選手は野球をしたくても、どこにも行くところがありません。稀に引き取ってくれる球団もありますが1,2年でまた戦力外通告になる選手が大半です。そのような選手を救うためにトライアウトという再度野球選手に挑戦する制度もありますが、毎年50~60名ほど参加し、球団と正式に契約を交わす選手はわずか1~2名ほどです。いかにプロ野球が厳しい世界であるか痛感させられます。今日はそのような記事を紹介します。

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『ソフトバンクが大なた 今オフの戦力外が合計18選手に 椎野新、増田珠らと来季の契約結ばず』
 ソフトバンクは28日、椎野新投手(28)と増田珠内野手(24)の支配下2選手と重田倫明投手(27)、早真之介外野手(21)、ドミニカ共和国出身のフランケリー・ヘラルディーノ内野手(18)の育成3選手と来季の契約を結ばないと通告したと発表した。
 椎野は国士舘大から2018年にドラフト4位で入団。196センチの長身を生かし、19年には自己最多の36試合に登板し、5勝2敗、6ホールドの成績を残した。今季は11試合に登板。通算78試合、6勝4敗、8ホールド、防御率3・87。
 長崎県出身の増田は横浜高から18年にドラフト3位で入団。元気いっぱいのプレースタイルで22年にはプロ初安打、初本塁打、初打点をマークした。今季も35試合に出場した。通算52試合、打率2割2厘、2本塁打、9打点。
 ソフトバンクは5日に奥村、岡本、中道、中村宜、舟越、居谷の育成6選手、22日に森、嘉弥真、上林、高橋純、佐藤直、九鬼、古川の支配下7選手に来季の契約を結ばないと通告したと発表。この日発表された5選手を加え、支配下9選手、育成9選手と計18選手が戦力外通告を受けた。
https://nishispo.nishinippon.co.jp/article/798256
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 上記にありますように、昨年まで1軍であれほど活躍した森、嘉弥真、上林各選手がクビになる事実にプロの世界の厳しさを痛感します。他球団も似たり寄ったりでしょう。実力がなければ、すぐクビになる世界。実力があれば人気や金はいくらでもついてくる。もちろん野球だけではありません。サッカーや他のプロスポーツも同じ状況です。
 他人事ながら、クビになった選手のその後を心配します。大半の選手は若い頃から野球に明け暮れた日々を過ごしたことでしょう。野球を止めた後にどのような職種に就いて生活費を稼ぐことができるか、どうやって家族を養っていくのか、彼らの今後の大きな課題になります。
 このことはスポーツの世界だけのことではありません。芸術の世界はさらに厳しいことでしょう。特にクラシック音楽では何かの大会で優勝するか、それに匹敵する賞を取らない限り、演奏家として大成しません。普通の演奏レベルではプロの交響楽団にも入れません。趣味で演奏するには良いのですが、プロの演奏家になるには努力だけではどうにもならない才能が必要になります。スポーツや芸術にかかわらず、プロの世界は本当にに厳しいものです。それだけにプロとして活躍している人には賞賛に値します。厳しい世界の頂点に上りつめた者だけが手にする最高の賞賛です。

2023年10月29日