#466 古代コンクリート

 正月から晴天続きで、しばらく乾燥状態が続いていましたが、週末から雨が断続的に降り始め、季節は暖冬から厳冬へ再び向かい始めています。また共通テストも本日で終わり、大学受験生は本格的な入試シーズンへ突入していきます。20日には筑後地区で高校先願入試が行われ、高校入試も本格化してきます。新コロが再び拡大している状況で人生の節目を迎えている受験生はまず健康第一で、自分の目標に向かって最後の頑張りをしてもらいたいものです。
 さて、最近面白い記事を目にしました。「古代コンクリート」という言葉を聞いたことがありますか。古代ローマ時代で使用されたコンクリートのことです。現代建築で使用されている鉄筋コンクリートは耐用年数が100年余りと言われていますが、古代ローマのコンクリートを使用した建築物は2000年経った今も壊れることなく頑丈に立っています。「古代」と「現代」のコンクリートはいったい何が違うのでしょうか。ネットに面白い記事がありますので、それを転載します。
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『古代ローマ時代のコンクリートは、今も強度を増していた──その驚くべき理由が解明される』
 コンクリートは、年月が経つにつれてもろくなるのが普通だ。だが、古代ローマ時代に作られた岸壁のコンクリートは、時間が経てば経つほど強度を増していた。その驚きの理由が、米研究チームによって解明された。
 古代ローマ帝国が滅亡したのは1,500年以上も前のことだ。だが、この時代に作られたコンクリートは、現在も十分強度がある。例えば、ローマにあるパンテオンは無筋コンクリートでできた世界最大のドームといわれているが、約2,000年経った今も強度を保っている。これは現代のコンクリートでは考えられないことだ(現在のコンクリートの寿命は、50年から100年程度とされる)。なぜ、ここまで古代ローマのコンクリートが強いのか。その謎が解明されつつある。
 古代ローマ時代のコンクリートは、火山灰、石灰、火山岩、海水を混ぜ合わせて作られている。このうち、重要な役割を果たしているのが、最後の材料である海水だ。この珍しい材料の組み合わせのおかげで、1,000年以上の時間をかけてコンクリート内で新しい鉱物が形成され、ますます強度を増しているらしい。
 その秘密を解明するため、米エネルギー省のローレンス・バークレー国立研究所の研究チームは、古代ローマ時代に作られた岸壁や防波堤のコンクリートを採取して、X線マイクロ解析を行った。
 『American Mineralogist』誌オンライン版に2017年7月3日付けで掲載された研究成果によると、解析の結果、コンクリートの中にアルミナ質のトバモライト結晶が含まれていることがわかった。この層状鉱物が、長い時間をかけてコンクリートの強度を高めるのに重要な役割を果たしているという。この鉱物は、海水と石灰と火山灰が混ざり合って熱が発生することによって生成される。
 この研究を率いたユタ大学の地質学者マリー・ジャクソンは、「古代ローマ人は、海水と化学反応を起こして成長する岩のようなコンクリートをつくり出しました」と言う。また、この構造物に打ち寄せる海水が第2期の鉱物の成長を引き起こし、コンクリート全体の強度をさらに高めたことも、解析から明らかになった。
 鉱物粒子を分析した結果、コンクリート全体でトバモライト結晶が成長していることが確認された。しかも、この成長はたいてい、フィリップサイトと呼ばれる別の結晶の成長と同時に起こっているという。こうした新しい鉱物は、火山灰が海水によって溶解したときに形成される。長い時間をかけて海水が火山灰を溶かすにつれて、コンクリートはどんどん強度を増していったのだ。
 これに対し、現代のコンクリートは、いったん固められた後にその構造が変化するようにはつくられていない。そのため、鉱物によって成長する古代ローマ時代のコンクリートと違い、私たちが今日利用しているコンクリートは、なんらかの化学反応が起こると、裂けたり割れたりしてしまう。とりわけ、海水は現在の防波堤にとって脅威となっている。補強鋼が錆び、その周りのコンクリートが腐食してしまうからだ。
 古代ローマ人は、幸運にも理想的な岩壁を作成することができた。そこでジャクソンは、現代科学の力を借りてこのコンクリート混合物を再現したいと考えている。
 ※古代ローマで使われていたコンクリート(ローマン・コンクリート)の研究をもとに、コンクリートの結晶に「螺旋転位」と呼ばれる“欠陥”を意図的につくると強度が2倍に高まるという研究結果も発表されている。なお、米軍は通常のコンクリートよりはるかに強度があり耐久性もあるスーパー・コンクリート(ジオポリマー)の研究を進めているが、大ピラミッドの石も同種の技術で作られていたという説もある
https://wired.jp/2017/07/30/roman-concrete/
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 上記の説明が正しいとすれば、現代建築は古代ローマの建築よりも劣っていることになります。あるいは経済性を優先するあまり、故意に100年前後の耐久性にしたとも考えられますが、真実は分かりません。しかし、多くの高層ビルで現代コンクリートが使用されている現状では、いつかは建て替えなければならない時期が来ることでしょう。日本でも多くのコンクリート建設物の耐久性が課題となっており、特に橋梁の架け替えが問題となっています。
 これは日常で使用する家庭用品も例外ではありません。私が使用していた電気ケトルは購入して5年で壊れました。ネットで調べてみると、多くの製品が5年で故障するように設計されているそうです。長期間使用するように作ることも可能でしょうが、そうすると製品が売れなくなるので、使用期限を早めに設定しているようです。現代文明では大量消費を基本としていますので、長持ちする製品は敬遠されるのでしょう。残念なことです。

2023年01月15日