#583 ありがた迷惑

 昨夜の雨で桜花も大半が散ってしまいました。これからは葉桜として人から見向きもされないでしょう。しかし桜は人が見ていなくても健気(けなげ)に成長し、翌春に向けて蕾のままで越冬し、次の開花の準備をします。これからは桜花に代わり多くの春の花が咲き乱れることでしょう。
 ところで、最近様々な場所でIT化が進み、従業員不足も影響して多くのスーパーマーケットやコンビニではオートレジの導入が進んでいます。初めてオートレジを体験した人は、その使い方に少なからず戸惑ったことと思います。また飲食店では料理を注文する際に多くの店でタブレットを導入しています。このタブレットも初めて使用した人は、どのように料理を注文したらよいか途方に暮れたことでしょう。
 さらにスマホからQRコードを読み取り注文する店も増えてきました。この客のスマホを用いた注文方法に賛否両論が巻き起こっています。読売新聞は次のような特集記事を載せています。
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『飲食店のスマホ注文に賛否「二度と来るか!」QRコードで激高する客も』
 スマホ注文に「こんな店二度と来るか!」――。最近、テーブルに置かれたタブレット端末や、QRコードを読み取るスマホでの注文など、モバイル端末を使ってオーダーする飲食店が増えました。振り返れば、エコバッグ、セルフレジ、紙ストロー、渋沢栄一……。買い物や外食などの際のシステムやルールがアップデートされると、多少の違和感や戸惑いは付きものですが、かたくなに抵抗する人もいます。読売新聞のユーザー投稿サイト「発言小町」には、スマホ注文を巡るトピックに様々な意見が寄せられました。
 スマホ注文とは、店内で飲食をする際、テーブルごとに用意されているQRコードをスマホで読み込み、表示されたメニューから客がスマホを使って注文を行うオーダーシステムです。店員を介さずに注文することができ、「スマホオーダー」や「モバイルオーダー」と呼ばれることもあります。
 発言小町に投稿した「電子化バンザイ」さんは「全てのお店に導入してほしいくらい気に入っています」とスマホ注文を支持する立場ですが、「QRコードで読み取ってください」と店員さんに促された客が、「こんな店二度と来るか!」と立ち去っていく場面に出くわし、あぜんとしたことがあるそう。

<紙メニューがいいですね~>
 このトピには、140件の反響が寄せられました。自分が望んだわけでもなく突然押し付けられた「注文のデジタル化」に対し、「スマホを持っていない人はどうするの?」「高齢の親には難しいだろう」などと不安視するコメントが相次ぎました。店側が用意したタブレットは構わないが、客のスマホを使うオーダーシステムに疑問という声も多く寄せられました。
 「私はメニューだけは大きな物が見たいですね」と紙のメニュー表を支持する「柊hi-lite」さんは、「メニューをぱっと開いて、たくさんの画像を見て『あ、これおいしそう』と選ぶのがいいですね。セットメニューも一目瞭然ですし」とひと目で全体を見渡せる一覧性の利点を指摘。「スマホやタブレット画面だと、スワイプしたりしないと次の情報が出てこないのが嫌です」
 「65歳の私の友人たちの中には、スマホを持たない人、持っていても通話とメール程度しか使わない(使えない)人もいます」とデジタル弱者へ目を配る「べるる」さん。若いころ、ATMの操作やビデオ録画に手こずっていた親の姿を思い出し、パソコンやスマホに気後れしている自身の姿に重ね合わせます。「QRコードでの決済や注文、それしかできないのならがんばりますが、紙メニューが良いですね~」としみじみとつづります。
 QRコードを読み取れず、店を立ち去った経験談も寄せられました。「先日初めてQRコード式のメニューのお店に入りました」と書き込んだ50代の「ハナコ」さん。「月末でスマホの契約ギガ数が残り少ない状態」でしたが、「サクサク読み込めれば問題ないかな」とスマホ注文に挑戦することに。ところが、読み込みに時間がかかり、メニューが一向に表示されません。これ以上通信料を使いたくないと、紙のメニューを頼んだものの、店員からは「ない」とそっけない返事。「だったら、と注文せずに出ました」と成り行きを説明しました。

<ゆっくり選べて最高ですよね>
 紙のメニューを支持する意見が目立つ一方で、タブレットやスマホによる端末オーダーを好む声も少なくありません。
 「マコ」さんは、「タブレットやQRコードによる非接触が好きです。近所のファミレスでは料理もロボットが運んで来ますが、それで良いです。それで良いというより、その方が気楽でいいです」とコメント。店員とのやりとりが煩わしいと感じているようです。
 「すもも」さんもトピ主さんに賛同する立場です。「ゆっくり選べて最高ですよね。キャッシュレス、セルフレジも大好きです! QRコード注文を疑問に思ったこともありませんでした」と絶賛。高齢者の一部に戸惑いがあることに理解を示しつつ、「スマホ操作も難しいような高齢者をターゲットにしたお店なら、QRコードは採用しないか、口頭でも注文できるようにするなどフォローしますよね」と持論を展開し、スマホ注文はその店の特色と捉えます。
 飲食店がスマホ注文を導入する背景として、深刻な人手不足に触れたコメントもありました。店の経営維持や生き残りを考えれば、接客の省力化は避けられないという「あお」さん。デジタル弱者に対する配慮についても、「デジタルメニューと紙メニューの両方用意する手間と経費と余裕が今の飲食店にあるとは思えない」と厳しい見方を示し、「これからますます色んな意味で、(スマホ注文を)面倒、苦手、無理、わかりにくいと言っている場合ではなくなる」と忠告します。
 グラスが空くのを見計らって店員がオーダーを聞きに来たり、その日のおすすめに釣られてついつい注文したり……。店員と客のそんなにぎやかなやりとりを好み、スマホ注文では味気ないと残念がる「リリ」さん。先日、タブレット端末を使った注文で、ちょっと面白いことがあったそうです。「居酒屋でタブレットを見たら、『店員呼び出し』の項目があり、数量『一』で『注文する』にしたら、店員が来ました」
 誰でも慣れるまでは、タブレット端末やスマホ注文に多少の抵抗感があるかもしれません。いずれにせよ、その店に客が「二度と来るか!」と思うのか、「また来たい!」と思うのかは、注文方法よりも店員の対応によるところが大きいのでしょう。

https://www.yomiuri.co.jp/otekomachi/20250408-OYT8T50020/
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 スマホやタブレット、コンピュータを使いこなせない人を「デジタル弱者」と呼んでいますが、デジタル弱者はデジタルディバイスに慣れていない高齢者に片寄る傾向があります。こういう私もつい最近ガラケーからスマホに交換したのですが(笑)、最初は何をどうしたらよいか全く分からない状態でした。パソコンやタブレットは授業で使いますので、ある程度使いこなせますが、スマホは次元が全く異なるデバイスでした。初期設定が終了するまでメール登録や認証確認など3時間ほどスタッフの方と一緒に格闘しました。それからスマホには取り扱い説明書が付いていないので、スマホに関する参考本を2~3冊購入して、今では何とか基本的なことを理解できるようになりました。まるで古代人がワープして現代社会にやって来た感覚です。
 確かにスーパーマーケットではオートレジの普及に伴い、多くの人が使いこなせるようになりましたが、それでも店によってはオートレジの表示画面が同じではなく、「現金払い」や「カード払い」のアイコンがどこにあるか探さないといけません。言いかえれば、店によってオートレジに慣れるのに時間がかかります。
 さらにQRコードを用いた店の料理の注文では、スマホがないと原則として注文できないことになります。もちろん口頭で注文することも可能ですが、まるで自分が田舎者や時代遅れの人間のように気が引けます。まして自分のスマホを使用するということは通信料がかかりますので、客の電波に店側がただ乗りしていることになります。この状態が良いかどうかは意見が分かれることでしょう。
 ましてタブレットやQRコードを使用することで、店員さんとの触れ合いが無くなり、対面によるコミュニケーションがありません。食事後の料金を支払うときに会話を少し交わすのみです。もちろんタブレットやQRコードの方が注文しやすいという人もいれば、店員に直接注文したいという人もいます。あくまでも好みの問題です。確かにスマホを使用した注文方法は便利ですが、スマホを使わない人にとっては「ありがた迷惑」にしかなりません。
 IT化することはよいことですが、万人に対して分かりやすいものでなければなりません。またITを利用した特殊犯罪も急増しています。技術革新により高度な犯罪もまた生じますので、非常に悩ましいことです。デジタルマネーが盗まれる国際犯罪も激増しています。私たちはデジタル技術の知識を身につけるとともに、その犯罪を防止する技術も身につける必要があります。とんでもない世の中になったものです。

2025年04月13日