#393 近くて遠い国

 私たち日本人は中国や韓国に対して近親感を感じながら、両国政府の日本に対する態度に不信感を感じざるを得ません。同じアジアの国でどうしてこれほどの国家間の違いが生じるのでしょうか。私たちは自国の考えや立場で隣国を考えようとしますが、民族や文化が異なれば、当然相手の態度も変わってきます。ここに外交や政治の困難さが発生します。
 太平洋戦争が勃発する以前に日本の敵国になったアメリカは徹底的に日本人の思想や文化を研究し、それを戦争へ大いに活用しました。その代表作がルース・ベネディクトの「菊と刀」です。この書物は当時の日本人を考え方を如実に物語っており、一読をお勧めします。それでは外交を行う際に中国人や韓国人の考え方を日本政府および政治家はどれだけ理解しているでしょうか。評論家である石平氏は次のように指摘しています。
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『中韓と日本は「異質の文明」』
《日本と中国・韓国との比較論について書いた著作も多い。同じ北東アジアで、儒教の影響を受けてきた共通点がある3つの国の「違い」は何か》
 確かに同じ北東アジアに位置し、儒教の影響を受けていたり、漢字(を基本とした言語)を使ったりするといった類似点はあるでしょうが、よく言われるような、「同文同種の文化」「一衣帯水の地」というのは誤解でしょう。文明の本質で言えば、日本と中韓は「異質」と言っていいほど違いがあります。
 まずは、国としてのあり方の違いです。日本は明治維新によって、いち早く近代化を成し遂げることに成功しました。「法の支配、自由、人権、民主主義」といった価値観を持つ法治国家となったのです。
 これに対し、中国や朝鮮半島の国(韓国、北朝鮮)はどうでしょう。平然と国際法のルールや国家同士の約束事を無視し、権力者の意向次第で政治が左右される。法治国家とはいえず「人治」です。

《日本人は「公」を重んじるが、中韓に「公」の意識は薄い》
 これまでも触れてきましたが、中国では、儒教の影響を受けた宗族(そうぞく)(父系の血縁社会)主義の下、一族の繁栄のみを追い求めてきたのです。歴代の王朝を見ても、漢王朝は劉氏、唐王朝は李氏…と、それぞれ一族(私)の政権であり、国家などという「公」の意識はまずありません。
 現代の中韓でも、かつての皇帝のごとく、国家主席や大統領が「一族の長」として絶大な権力を握り、人事や権限を独占している。利権やポストの〝甘い汁〟を求めて一族の連中がぶら下がり、一族丸ごとによるケタ違いの不正蓄財がなされる構図です。
一方の日本は、「私」よりも国家、会社といった「公」を大事にしてきました。順法精神や道徳心も高い。
 皇帝など絶対権力者にではなく、天皇―幕府―各藩といった多元的な権力構造を構築したこともよかった。このシステムは、聖(宗教)・俗の権力が分かれていた西欧に、むしろ似ていると思います。

《日本は「科挙(かきょ)」(儒学による中国隋(ずい)~清(しん)まで続いた官吏登用試験)を取り入れなかった。そこが、中韓との違いになった、という》
 試験に合格すれば、官吏になれる「科挙」は一見、公平なチャンスが与えられる制度のように見えます。ところが、科挙至上主義に陥り、それ以外の道はさげすまれました。とくに商人や職人がないがしろにされたことで「中間層」が育たなかったのです。
 一方、科挙を導入しなかった日本は江戸時代に町人文化が花開きます。庶民層も「読み書きそろばん」を身につけ、商工業が発達し、自由な発想が育つ。それが明治以降の近代化につながっていきます。
 日本は中国と距離を置いていた時代ほどよかったのです。遣唐使を廃止した平安時代。鎖国の江戸時代。「脱亜入欧」を掲げた明治期も、日露戦争まではよかったのですが…。日本の失敗は「中韓が同じ思想、同じ文明の持ち主」と誤解してしまったことにあるのです。
(https://www.sankei.com/article/20210805-BS2JXUX2ONM6BIGQYKM
                                ZHFEDOQ/)
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 テレビでは毎日韓国や中国の歴史ドラマを放送していますが、この両国に対して私たちはどれほどの認識を持っているでしょうか。韓国文化の根底には「恨(はん)」の思想があり、先祖が受けた恥辱は子孫がはらす考えがあります。これが慰安婦問題や、さらに400年前の秀吉による朝鮮出兵への恨みとなっています。
 一方中国は「三国志」に代表される「兵法」の国です。いかに敵をごまかすか、いかに戦わないで勝つかを常に考えます。この考えは現在の共産主義中国にも当てはまります。尖閣列島問題しかり、香港問題しかりです。隙を見て相手の弱点を突いてきます。韓国政府や中国政府と交渉する際には一筋縄ではいきません。相手国の思想や文化、歴史的な関係性を考慮しないと、外交交渉はうまくいきません。政治家はその点しっかりと勉強して外交交渉に望んてもらいたいものです。外交交渉の可否は今までの歴史がすべて物語っています。

2021年08月22日